注意: 最新版のドキュメントをご覧ください。この第1版ドキュメントは古くなっており、最新情報が反映されていません。リンク先のドキュメントが現在の Rust の最新のドキュメントです。

Box構文とパターン

今のところ、安定版において Box を作成する唯一の方法は Box::new メソッドです。安定版のRustではパターンマッチで Box を分解することもできません。不安定版の box キーワードは Box の作成と分解の両方に使えます。使い方は以下の通りです。

#![feature(box_syntax, box_patterns)] fn main() { let b = Some(box 5); match b { Some(box n) if n < 0 => { println!("Box contains negative number {}", n); }, Some(box n) if n >= 0 => { println!("Box contains non-negative number {}", n); }, None => { println!("No box"); }, _ => unreachable!() } }
#![feature(box_syntax, box_patterns)]

fn main() {
    let b = Some(box 5);
    match b {
        Some(box n) if n < 0 => {
            println!("Box contains negative number {}", n);
        },
        Some(box n) if n >= 0 => {
            println!("Box contains non-negative number {}", n);
        },
        None => {
            println!("No box");
        },
        _ => unreachable!()
    }
}

注記: 将来的にこの構文は変わる可能性があるため、現時点でこれらのフィーチャは box_syntax (boxの作成)、 box_patterns (分解とパターンマッチ)を明示しなければ使えません。

ポインタ返し

ポインタを持つ多くのプログラミング言語では、巨大なデータ構造のコピーを避けるため、関数からポインタを返してきました。例えば以下のように書くことができます。

struct BigStruct { one: i32, two: i32, // etc one_hundred: i32, } fn foo(x: Box<BigStruct>) -> Box<BigStruct> { Box::new(*x) } fn main() { let x = Box::new(BigStruct { one: 1, two: 2, one_hundred: 100, }); let y = foo(x); }
struct BigStruct {
    one: i32,
    two: i32,
    // etc
    one_hundred: i32,
}

fn foo(x: Box<BigStruct>) -> Box<BigStruct> {
    Box::new(*x)
}

fn main() {
    let x = Box::new(BigStruct {
        one: 1,
        two: 2,
        one_hundred: 100,
    });

    let y = foo(x);
}

考え方としては、boxで渡すことで BigStruct を構成する100個の i32 の代わりにポインタのみのコピーで済む、というものです。

これはRustではアンチパターンです。代わりに以下のように書きます。

#![feature(box_syntax)] struct BigStruct { one: i32, two: i32, // etc one_hundred: i32, } fn foo(x: Box<BigStruct>) -> BigStruct { *x } fn main() { let x = Box::new(BigStruct { one: 1, two: 2, one_hundred: 100, }); let y: Box<BigStruct> = box foo(x); }
#![feature(box_syntax)]

struct BigStruct {
    one: i32,
    two: i32,
    // etc
    one_hundred: i32,
}

fn foo(x: Box<BigStruct>) -> BigStruct {
    *x
}

fn main() {
    let x = Box::new(BigStruct {
        one: 1,
        two: 2,
        one_hundred: 100,
    });

    let y: Box<BigStruct> = box foo(x);
}

このように書くことでパフォーマンスを犠牲にすることなく、柔軟性を確保することができます。

このコードはひどいパフォーマンス低下をもたらすと感じるかもしれません。値を返して即座にboxに入れるなんて?! このパターンは悪いところどりになっているのでは? Rustはもう少し賢いため、このコードでコピーは発生しません。 main 内では box のために十分なメモリ領域を確保し、そのメモリへのポインタを foox として渡します。 foo はその値を直接 Box<T> (訳注: すなわち y )の中に書き込みます。

重要なことなので繰り返しますが、ポインタを戻り値の最適化のために使うべきではありません。呼び出し側が戻り値をどのように使うかを選択できるようにしましょう。