付録A: キーワード

以下のリストは、現在、あるいは将来Rust言語により使用されるために予約されているキーワードです。 そのため、識別子として使用することはできません。識別子には、関数名、変数名、引数名、構造体のフィールド名、モジュール名、クレート名、定数名、マクロ名、静的な値の名前、属性名、型名、トレイト名、ライフタイム名などがあります。 ただし、生識別子のところで議論する生識別子は例外です。

現在使用されているキーワード

以下のキーワードは、解説された通りの機能が現状あります。

  • as - 基礎的なキャストの実行、要素を含む特定のトレイトの明確化、useextern crate文の要素名を変更する
  • async - 現在のスレッドをブロックする代わりにFutureを返す
  • await - Futureの結果が準備できるまで実行を停止する
  • break - 即座にループを抜ける
  • const - 定数要素か定数の生ポインタを定義する
  • continue - 次のループの繰り返しに継続する
  • crate - 外部のクレートかマクロが定義されているクレートを表すマクロ変数をリンクする
  • else - ifif let制御フロー構文の規定
  • enum - 列挙型を定義する
  • extern - 外部のクレート、関数、変数をリンクする
  • false - bool型のfalseリテラル
  • fn - 関数か関数ポインタ型を定義する
  • for - イテレータの要素を繰り返す、トレイトの実装、高階ライフタイムの指定
  • if - 条件式の結果によって条件分岐
  • impl - 固有の機能やトレイトの機能を実装する
  • in - forループ記法の一部
  • let - 変数を束縛する
  • loop - 無条件にループする
  • match - 値をパターンとマッチさせる
  • mod - モジュールを定義する
  • move - クロージャにキャプチャした変数全ての所有権を奪わせる
  • mut - 参照、生ポインタ、パターン束縛で可変性に言及する
  • pub - 構造体フィールド、implブロック、モジュールで公開性について言及する
  • ref - 参照で束縛する
  • return - 関数から帰る
  • Self - 定義しようとしている・実装(implement)しようとしている型の型エイリアス
  • self - メソッドの主題、または現在のモジュール
  • static - グローバル変数、またはプログラム全体に渡るライフタイム
  • struct - 構造体を定義する
  • super - 現在のモジュールの親モジュール
  • trait - トレイトを定義する
  • true - bool型のtrueリテラル
  • type - 型エイリアスか関連型を定義する
  • unsafe - unsafeなコード、関数、トレイト、実装に言及する
  • use - スコープにシンボルを持ち込む
  • where - 型を制限する節に言及する
  • while - 式の結果に基づいて条件的にループする

将来的な使用のために予約されているキーワード

以下のキーワードには機能が何もないものの、将来的に使用される可能性があるので、Rustにより予約されています。

  • abstract
  • become
  • box
  • do
  • final
  • macro
  • override
  • priv
  • try
  • typeof
  • unsized
  • virtual
  • yield

生識別子

生識別子 とは、普段は使うことが許されないキーワードを使わせてくれる構文です。 生識別子はキーワードの前にr#を置いて使うことができます。

たとえば、matchはキーワードです。 次の、名前がmatchである関数をコンパイルしようとすると:

ファイル名: src/main.rs

fn match(needle: &str, haystack: &str) -> bool {
    haystack.contains(needle)
}
// 訳注: 引数名は、"a needle in a haystack" すなわち「干し草の中の針」という、
// 「見つかりそうにない捜し物」を意味する成句からもじった命名。
// 検索をする関数でよく使われる。

次のエラーを得ます:

error: expected identifier, found keyword `match`
 --> src/main.rs:4:4
  |
4 | fn match(needle: &str, haystack: &str) -> bool {
  |    ^^^^^ expected identifier, found keyword

このエラーはmatchというキーワードを関数の識別子としては使えないと示しています。 matchを関数名として使うには、次のように、生識別子構文を使う必要があります。

ファイル名: src/main.rs

fn r#match(needle: &str, haystack: &str) -> bool {
    haystack.contains(needle)
}

fn main() {
    assert!(r#match("foo", "foobar"));
}

このコードはなんのエラーもなくコンパイルできます。 r#は、定義のときも、main内で呼ばれたときにも、関数名の前につけられていることに注意してください。

生識別子を使えば、仮にそれが予約されたキーワードであろうとも、任意の単語を識別子として使えるようになります。 更に、あなたのクレートが使っているRustのeditionとは異なるeditionで書かれたライブラリを呼び出すこともできるようになります。 たとえば、tryは2015 editionではキーワードではありませんでしたが、2018 editionではキーワードです。 もし、2015 editionで書かれており、try関数を持っているライブラリに依存している場合、あなたの2018 editionのコードからその関数を呼び出すためには、生識別子構文を使う必要がでてくるでしょう。今回ならr#tryですね。 editionに関して、より詳しくは付録 Eを見てください。